東京高等裁判所 昭和36年(う)788号 判決 1962年8月07日
判 決
会社役員
久保正雄
元大蔵技官
浪岡重一
会社員
渡辺武男
会社員
山田幸雄
右久保正雄に対する私文書偽造、同行使、贈賄、浪岡重一、渡辺武男、山田幸雄に対する収賄各被告事件につき、昭和三十六年一月十六日東京地方裁判所が言い渡した有罪の判決に対し、被告人山田幸雄の原審弁護人吉田太郎及び被告人久保正雄、同浪岡重一同渡辺武男からそれぞれ適法な控訴の申立があつたので、当裁判所は検事青山利男、同渡辺薫公判出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
原判決中被告人久保正雄、同浪岡重一に関する有罪部分及び被告人山田幸雄に関する部分を破棄する。
被告人久保正雄、同山田幸雄を各懲役一年に処する。
右被告人両名に対し、この裁判確定の日からいずれも四年間右各刑の執行を猶予する。
押収にかかるアングロ、カルフオルニア、ナシヨナルバンクの預金残高証明書(当裁判所昭和三六年押第三一〇号の一ないし一〇)の偽造部分を没収する。
被告人山田幸雄から米国ウエスチング社製電気冷蔵庫一台を没収し、金五十万円を追徴する。
原審の訴訟費用中証人市川清、同内山正、同柳沢辰枝、同佐藤国光、同佐藤恒夫、同島根清之助、同山下常太郎及び通訳人逸見益宏に支給した分並びに当審の証人平野三郎、同大島真治、同笹原照子、同柳沢辰枝、同内山正、同佐藤菊凍、同秦朗に支給した分はいずれも被告人久保正雄の負担とする。
被告人久保正雄に対する本件公訴事実中、同被告人が昭和三十一年六月ころ東京都中央区銀座七丁目二番地東日モータース株式会社において当時大蔵技官として東京税関鑑査部輸入鑑査第二課第二鑑査係長の職にあつた被告人浪岡重一に対し、その職務に関し、賄賂として紺色トロピカル背広一着を供与したとの部分は無実。
被告人浪岡重一は無罪。
被告人渡辺武男の本件控訴はこれを棄却する。
理由
本件各控訴趣意は、被告人久保正雄の弁護人花井忠、同中村信敏、同沢荘一連名作成名義の控訴趣意書、被告人浪岡重一の弁護人田中政義作成名義の控訴趣意書、被告人山田幸雄、同被告人の弁護人吉田太郎、同松浦登志雄連名作成名義の控訴趣意書、右弁護人吉田太郎作成名義の控訴趣意書及び被告人渡辺武男の弁護人小幡勇二郎作成名義の控訴趣意書にそれぞれ記載されているとおりであるから、いずれもここに引用し、これに対し次のように判断する。
被告人久保の弁護人の控訴趣意第一点(事実誤認)について、論旨の第一は、原判示第一の(一)の事実は事実誤認の違法がある、被告人久保はゲルハルトと共同で新自動車を無為替輸入の方法で輸入し、これを転売する計画をしたことはなく、また原判示の如き銀行の預金残高証明書を偽造するにつき同人と共謀した事実はない、右自動車の無為替輸入やその転売はゲルハルト単独の事業であり、銀行の預金残高証明書もゲルハルトが単独で用紙を印刷させたものであつて被告人久保は全然これに関与していないという趣旨である。そこで記録及び原審で取り調べた各証拠を調査検討するに、後記の預金残高証明書用紙を印刷させた時期を除き、原判決に挙示する各関係証拠により、原判示第一の(一)被告人久保の犯行は十分これを認めることができるのであつて、当審の事実調の結果によつても右認定を左右するに足りない。
即ち、被告人久保は昭和三十三年三月二十二日付(第二回)司法警察員に対する供述調書以来検察官に対する供述調書まで、原判示第一の(一)の犯行を逐一自白しており、起訴後原審公判において審理されるに至つてこれを否定するようになつたのであるが、相被告人山田幸雄は原審第二十二回公判において、同被告人が被告人久保のためしばしば自動車の無為替輸入承認申請の書類を調べてやつたり、その手続を教えてやつたり、その書類を所管課である通商局輸入第二課に取り次いでやつたり、また同被告人の妹をして自分の代りに被告人久保の右申請書類を輸入第二課に提出させたりした事実があると述べているし、原審証人内山正は、原審第七回公判において、被告人久保の命により東日モータース株式会社の仕事として一ケ月十回位も自動車の無為替輸入承認申請書類を通商産業省の所管課に提出に行き、被告人山田に速かに許可が受けられるよう依頼したことがある旨の証言をしているし、原審証人柳沢辰枝は原審第七回公判において、東日モータース株式会社に勤務中無為替輸入自動車の通関手続の仕事もしていたが、その書類はゲルハルトが作つて来るので久保社長に断つて税関にでかけていた。同人と久保社長との関係は共同経営か何か判らないが、同人が久保社長の会社に勤めていたとは思われない、会社でゲルハルトから無為替輸入自動車の通関手続を頼まれてしてやつて、同人から報酬を貰つたことはない、ゲルハルトが赤坂に移つてから五回位会社に内緒で同人に頼まれて通関手続をしてやつたことがあり、その時は一台について一万円づつ同人から報酬を貰つた。このことは久保社長は知らない旨の供述をしており、また同証人の昭和三十五年十月五日付原審の尋問調書には、東日モータースで通関手続の仕事をしていた時、ゲルハルトから直接個人的に頼まれたことはない、自分のした通関手続はゲルハルトの仕事としてやつたのか、東日モータースとしてやつたのかわからない旨の供述記載があるが、これらの証拠(右各証拠中摘録した以外の部分も含めて)を総合すると、被告人久保は、被告人山田が通商産業省重工業局自動車課総括班庶務係長兼通商班輸入係長に在職当時から昭和三十二年二月一日自動車の無為替輸入の制度が廃止されるまでの間、チヤールス・ジヨセフ・ゲルハルト・ジユニアと共同で、外国人名義でする無為替輸入の方式により自動車を輸入しこれを転売する仕事に従事していた事実を優に認めることができる。
尤も被告人山田は昭和三十五年七月六日の原審第二十三回公判において、弁護人の尋問に答え、前回被告人久保のために自動車の無為替輸入承認申請について相談相手となり、申請書類を調べたり、その提出を取り次いだりしてやつた旨の供述を変更するかのような供述をし、それは久保のためというより久保の会社に出入する外国人のためにしてやつたものという趣旨を述べているが、右第二十三回公判における同被告人の供述は極めて漠然、曖昧なものであり、その外国人とは無為替輸入を申請する輸人名義人であるのか、あるいはその代理人又は代行者であるのか、その外国人と被告人久保との関係、何故被告人久保がそれらの外国人のために被告人山田に無為替輸入申請書類を世話してやるのか、それら重要な事項については殆んど供述はないのであるから、被告人山田は右公判において前回の公判の供述並びにそれと同趣旨の司法警察員及び検察官に対する供述を変更しようとしたのかどうか理解に苦しむのであるが、仮に前回までの各供述内容を変更する趣旨であつたならば、これは右の理由により措信するに足らず、取り上げる価値のない供述である。また前記原審証人内山正は、前記原審公判における供述の後、弁護人の尋問に対する供述として、また当審における証人として、前記証言を翻えし、通商産業省に自動車の無為替輸入申請書類を持参したのは、久保社長の命により東日モータース株式会社の仕事として行つたのではなく、ゲルハルトの手伝として行つた旨の供述をしているが、同証人がかように重要な証言を変更するに至つた動機、理由については何らの説明もなく極めて不自然であるし、被告人山田の前記供述やその他の証拠に照し首肯し難い点が多いので同証人の後の証言は措信しない。
被告人久保が前認定のようにゲルハルトと共同で自動車の無為替輸入と転売をしていた事実と、原判決に関係証拠として挙げている、(中略)、原審証人チヤールス・ゲハルト・ジヨセフ・ジユニアの原審第五回公判の供述調書中、自動車の無為替輸入の仕事は久保だけがやつていたので自分はやつていない、自分は助言者であつた、銀行の預金残高証明書を作るに当り、その預金名義人の名前は、自分が久保から一人いくらというコムミツシヨンを貰つて他の外国人から借りることを委託された趣旨の供述部分を除くその余の供述記載並びに原審第二回公判における被告人久保の「自分がゲハルトの依頼を受けて昭和三十年暮ころ起訴状記載のアングロ、カルフオルニア、ナシヨナルバンクの預金残高証明書用紙五十枚位の印刷を市川清に対して依頼したこと、ゲルハルトがその用紙を不正に使用するのではないかとうすうす思つていた」旨の供述(昭和三十三年七月十一日付被告人久保作成名義一公訴事実に対する供述書一記載)原判決掲記の昭和三十一年度分輸入申告書類一綴及び以上の各証拠により事実の真相を供述したものと認められる原判示挙示の被告人久保の司法警察員検察官に対する各供述調書を総合すると、被告人久保がゲルハルトと共謀のうえ、アングロ、カリフオルニア、ナシヨナルバンクの預金残高証明書用紙を市川清を介して平野三郎に印刷させ、ゲルハルト自ら又は被告人久保の雇人内山正が使者となり、預金名義人とする米国人その他の外国人に交渉して預金名義人となることの承諾を得たうえ、原判示のころゲルハルトが東日モータース株式会社において同会社のタイプライターを使用し、右用紙に名義を借りた当該外国人が右銀行に預金を有しているような虚偽の内容を打字し、もつて右銀行作成名義の本件預金残高証明書十通を作成偽造した事実を認めるに十分である。
弁護人は被告人久保の原審第二回公判における前記供述は、同被告人がインボイス用紙の印刷と感違いし誤つて預金残高証明書用紙と述べた旨主張するけれども、当公廷における被告人久保の供述によれば、同被告人は原審公判前一切の事実を各原審弁護人に話し、弁護人が同被告人の主張せんとするところを書面に作成し、同被告人も閲覧のうえ、これを陳述書として原審法廷に提出すると共に第二回公判の冒頭にこの陳述書に基いて被告事件に対する陳述をしたというのであるが、本件預金残高証明書の用紙は、同被告人に対する本件私文書偽造行使の公訴事実の中核をなす重要な物件であり、この用紙の印刷に関与したかどうかは、右犯罪の成否を左右する程重大な事実である。同被告人が右私文書偽造行使罪で起訴されたのは昭和三十三年四月十二日であり、原審の四弁護人を選任したのは同年三月二十四日ないし四月十四日、原審第一回公判期日は同年五月二十三日(検察官の公訴事実陳述)第二回公判期日が同年七月十一日であるから、同被告人の右起訴に対する防禦方法は、被告人においてもまた原審各弁護人においても、十分な準備、研究をする時間的余裕があつたに拘らず、被告人が公訴事実を認否する冒頭の陳述内容について被告人と弁護人とが協議作成した陳述書について右のような重要な点を取り違え、且つこれを被告人が法廷で陳述するというようなことは到底信じられないことである。しかも原審の最終公判においては、弁護人はやはり被告人久保が右預金残高証明書用紙の印刷に関与した事実を認め、これを前提とする弁論をしているのである。これらの事実から考えると、同被告人の原審第二回公判における前記陳述は真実を述べたものと認めざるを得ない。
なお市川清に預金残高証明書用紙の印刷を依頼した時期及び依頼した者がゲルハルトであるか、被告人久保であるかの二点に関しては、同被告人の供述が必ずしも一致しないのであつて、時期については被告人久保は昭和三十年暮ころと述べているが、原審及び当審の証人笹原照子の証言と当審証人平野三郎の証言及び大島真治の司法警察員に対する供述調書の供述記載の各時期がほぼ一致しているから、右笹原や大島らのいうように、それが昭和三十年秋ごろ即ち同年十月ころと認めるのが正当であり、被告人久保の供述は記憶違いと思料される。従つてこの点に関する原判決の認定は事実を誤認したものといわざるを得ないが、この事実誤認は明らかに判決に影響を及ぼさないものと認められるからこれは原判決を破棄する理由とはならない。また印刷を依頼した者については、被告人久保の前記供述、原審証人ゲルハルト、同市川清及び前記笹原照子の各証言と、昭和三十五年十月十二日付被告人久保正雄作成名義の上申書中、ゲルハルトが市川にインボイス用紙の印刷を依頼する際同被告人が居合せて通訳をしてやつたことがある旨の記載とを総合すると、右笹原が電話で呼んだ市川に対しゲルハルトが印刷の依頼をし、居合せた久保がこれに助言又は通訳をしてやつたものと認めるのが正当である。証人笹原照子の証言中右認定と異なる部分があるが、これは同証人の記憶違いと認めるのが相当であろう。
なお当審において取り調べた千九百六十一年十月四日付チヤールズ、ジエイ、ゲルハルト・ジユニア作成名義の宣誓供述書には、ゲルハルトの原審公判における証言中本件預金残高証明書の偽造に関する部分は虚偽であり、その偽造には被告人久保は何ら関係なく、ゲルハルトが単独で偽造したものである旨の記載があるが、証人久保幸雄の証言により認められる右供述書の作成経過に鑑み右記載内容は措信しない。その他原審及び当審で取り調べたすべての証拠によつても、原判決の認定及び当裁判所の前記判断、認定を左右するに足りるものはない。それ故原判決の判示第一の(一)の被告人久保の犯行に関する事実認定には所論のような誤認の違法はなく、この点に関する論旨は理由がない。
次に事実誤認の論旨の第二は、原判決が判示第一の(二)(三)に認定する被告人久保が被告人山田、浪岡、渡辺に贈与した金品の趣旨及びその金額は事実を誤認したものであり、被告人久保はいずれも賄賂として供与したのではない、原判決が右各事実の証拠として挙げている被告人久保の司法警察員及び検察官に対する各供述調書は任意性を欠く、という趣旨である。そこで被告人浪岡に関する部分を除き、その余の原判示第一の(二)及び(三)の事実について記録及び証拠物を調査し、原判決挙示の証拠を検討するに、所論被告人久保の各供述調書が任意性を欠如する違法のものと認めるに足る確証はなく、結局原判示事実はすべて右各証拠により十分認めることができ、原審の他の資料及び当審の事実調の結果によつても右認定を覆すことはできない。なお所論は自動車の無為替輸入制度は昭和三十二年二月一日から廃止されていたのであるから、原判決が、被告人久保が昭和三十二年二月上旬から同年四月下旬ころに至るまで三回にわたり自動車の無為替輸入承認申請の手続に関し被告人山田に贈賄したと認定しているのは明白な誤判であると主張する。記録を調査すると、自動車の無為替輸入の制度は、携帯品の場合を除き所論の日から廃止された事実が明白であり、且つ被告人山田は昭和三十一年四月一日から自動車課庶務係長兼輸入係長のうちその兼務をやめ、庶務係長の本務のほか車体、ばね、資材の各係長を兼務していたのであるから、原判決は罪となるべき事実の摘示のうち、所論の点に関しやや正確を欠く嫌いがあるが、要するに原判決は自動車の無為替輸入制度の存続していた期間、被告人山田から受けた原判示の取扱に対する謝礼として、その制度の廃止された後に原判示の金員を供与した事実を認定した趣旨と解せられるから、所論のような事実誤認の瑕疵はなく、また右行為が贈賄罪を構成することも疑ないところである。それ故この点の論旨も理由がない。
同弁護人の控訴趣意第二点(理由不備、理由のくいちがい)について
論旨の一は、原判決は判示第一の(二)において前に自ら認定した被告人山田の職務範囲を逸脱し、無為替輸入承認申請に関しその手続の教示までも同被告人の職務のように認定したのは判決に理由のくいちがいであり、また右のような手続の教示は一般公務員に存する職務外の負担であり、これに対する謝礼は賄賂に該当しないという趣旨である。しかし原判示のように自動車課庶務係長兼輸入係長として自動車の無替為輸入承認申請書類の受理、配布、記帳、書類の審査等の職務を担当する被告人山田にとつては、その申請者等に対するその手続の教示は本来の職務に密接な関連を有する事項であるから、その行為に対する謝礼は職務に関する賄賂に該当するものと解すべきである。
また論旨の二は、自動車の無為替輸入は昭和三十二年二月以来廃止されたのであるから、原判決別表乙の同年二月以後の金員贈与は、虚無の職務に対するものであつて賄賂罪を構成せず、この点原判決は理由にくいちがいありというのである。しかし前項に説示したとおりこの点については原判決には何ら所論のような違法は認められない。
論旨の三は、原判決は判示第一の(一)の私文書偽造行使の所為につき、証人市川清の証言その他原判決に掲げる証拠中被告人久保の犯行を証明し得るものはないとしてその証拠全部を排斥しながら、しかもそれらの証拠を証拠の標目中に挙げて同被告人の犯行を認定しているのは、明らかに、判決理由のくいちがいであるという趣旨と解せられるのであるが、原判決は、原判決挙示の各証拠がそれぞれ同被告人の犯行を証明し得る証拠価値がないといつているのではなく、判示第一の(一)の共謀あるいは偽造行為に関する各証拠の、断片的、形式的な表現に拘泥しては事実の真相を捉え難いが、これらの証拠を総合して認められる一切の事情から判断すると、被告人久保の犯行を認定することができるという趣旨を説明したものと解すべく、原判決が自ら証拠価値を否定する証拠によつて被告人久保の有罪を認定したとする所論は原判決の趣旨を誤解したものである。
論旨はいずれも理由がない。
同弁護人の控訴趣意第三点(採証の法則違反)
原判決の「弁護人及び被告人の主張に対する判断」の項(1)に説示するところは、畢竟証拠の価値判断や心証形成の過程の大略を説明したものと解せられるが、弁護人の所論は要するに独自の見解に基きこれを論難し、結局原判決が証拠価値ありと判断したものを否定するものである。既に前項において判断したとおり、原判決に挙示する関係証拠を総合して原判示第一の(一)の被告人久保の犯行を認定したものであり、その証拠の取捨選択は毫も経験則に反するものとは認められない。論旨は理由がない。
同弁護人の控訴趣意第四点(法律適用の誤)について
原判決が本件贈賄及び収賄の罪に関係のない偽造のアングロ・カリフオルニア、ナシヨナルバンクの預金残高証明書を刑法第百九十七条ノ五を適用して没収していること所論のとおりであつて、これはまさしく原判決が法律の適用を誤つたものである。しかし右偽造文書は、原判示第一の(一)の私文書偽造の犯行により生じた物であつて何人の所有にも属しないものであるから、刑法第十九条第一項第三号、第二項本文により没収することができる物である。従つて原判決の右法律適用の誤は判決に影響を及ぼさないこと明らかであるから原判決を破棄する理由とはならない。結局論旨は採用できない。
被告人久保の弁護人の事実誤認に関する控訴趣意中
同被告人と被告人浪岡に関する部分及び被告人の弁護人の控訴趣意第一点(事実誤認)について
各所論の要旨は、本件の洋服は被告人久保が原判示のような趣旨で同被告人と被告人浪岡との間に授与されたものではなく、被告人浪岡がたまたま久保家を訪れた際、出入の洋服屋伊東信英が来合せたので、久保の妻が特に安いからとて被告人浪岡に洋服を作ることを勧め、被告人浪岡は勧められるまま自ら代金を支払う意思で伊東に注文して作らせたものである、という趣旨である。よつてこの点に関する原審の各証拠を調査するに、被告人浪岡が昭和三十一年六月ころ被告人久保方に出入する洋服商伊東信英に注文して本件の背広一着を作らせた事実は被告人浪岡の自認するところであるが、関係証拠によれば右背広は、被告人浪岡が被告人久保方を訪れた際、同人の妻久保笑子に勧められるまま来合せた伊東に注文したのであり、注文は被告人浪岡によるものであるが、被告人久保夫妻としては同被告人に贈与する意思で作ることを勧め、被告人浪岡も久保夫妻が自分に贈与する意図であることを察知しながら注文し、出来上つた背広を久保家において受領したものであることを認めることができる。即ち関係証拠によれば、右背広を注文する際被告人浪岡はその代金額がいくらであるか、又その代金の支払方法につき何ら伊東信英と話し合つた事実のないこと、背広を同被告人が受領した後も代金の支払につき伊東と何ら交渉した事実もなく、支払もしなかつたこと、その代金は伊東が被告人久保に対する債務と相殺していること、被告人浪岡が被告人久保が本件により逮捕された昭和三十三年三月二十二日の後である同年七月九日、はじめて伊東にあて郵送して右背広代金を支払おうとしたこと等の事実を総合すると、当初から被告人久保夫妻は本件背広を被告人浪岡に贈与する意思であり、被告人浪岡も贈与を受ける意思であつたことまことに明白といわざるを得ない。従つて久保、浪岡両被告人の弁護人が、被告人浪岡は当初から自ら代金を支払う意思があつたといい、被告人久保には贈与の意思がなかつたという主張は容認できない。
次に久保、浪岡両被告人の間に本件背広が授受された趣旨につき証拠を調査するに、原判示第一の(三)及び第三の事実を認定した証拠として原判決が挙示するもののうち、右趣旨の点に関する内容を有する証拠は、被告人浪岡の(イ)昭和三十三年四月二十四日付司法警察官に対する供述調書及び(ロ)同年五月八日付警察官に対する供述調書並びに被告人久保の(ハ)同年四月十八日付司法警察員に対する供述調書であり、原判決には挙示されていないが被告人浪岡の司法警察員に対する(ニ)同年五月二日付供述調書及び同年五月七日付供述調書にも、被告人浪岡が被告人久保から本件背広を贈与された趣旨に関する供述記載がある。そして(イ)(ロ)(ハ)の各供述記載を総合すれば、形式上、久保、浪岡両被告人間において原判示のような趣旨で本件背広が授受された事実を認められないことはない。しかしながら(イ)の供述調書を除き(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)の各供述調書は、単に本件背広の授受に関する供述のみが記載されているのではなく、いずれも背広のほか金員も被告人久保から被告人浪岡に同趣旨のもとに贈与され、被告人浪岡がこれを受領した旨の供述記載があるのであり、そして原判決においては、これらの供述調書中、久保、浪岡両被告人の間の金員授受に関する供述記載は信用性がないとして証拠価値を否定し、金員の贈収賄の公訴事実につき、無罪の判決を言い渡しているのである。そこで先ず原判決の、これら供述調書の金員授受に関する証拠としての価値判断の当否を記録に基き検討するに、その判断がまことに正鴻を得たものであることを認めることができるが、同一の被疑者が、同一の捜査官に、同一の機会に、同一の情況において金員と背広の授受に関する取調を受け供述した場合に、その供述調書の内容が仮に可分的であるとしても、金員に関する供述部分は信用性がないが背広に関する部分は信用性ありとするためには、後者について何らかの特別事情の存在を必要とするものといわなければならない。本件においては背広については金員の場合と異なり、背広そのものが現存し、且つそれが贈与として授受された事実を認め得べき前記のような他の証拠が存在しているのであつて、このことが背広に関する特別事情である。(従つて背広の贈与の事実は右各供述調書全部を除外してもこれを認定することができる。)然るに背広を授受した趣旨に関する供述部分を、金員と切り離し、信用性ありと判断し得るに足る特別事情は記録上全く発見できない。もとより背広を贈与した事実が認められるからといつて、それが賄賂即ち原判示のような趣旨で授受されたという供述部分に信用性ありといえないことは勿論である。従つて前記(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)の各供述調書は金員と背広とを含めてその贈収賄を自白した趣旨の供述部分は全部信用性なしといわざるを得ない。
ただ前記(イ)の供述調書は、金員の授受に関する供述部分はなく、本件の背広に関する供述のみを内容とするものであるが、贈与者たる被告人久保の、右(イ)に対応する供述調書は、前記(ハ)の調書のみであり、そしてこれは現金と背広とを賄賂の趣旨で浪岡に贈与した旨を一括して供述している調書であつて、この調書の信用性のないこと前記のとおりであるが、贈賄者たる被告人久保の供述を記載した唯一の調書がその信用性を否定され、被告人浪岡自身の前記(ロ)(ニ)(ホ)の供述調書が同様、信用性なしとして排除される以上右(イ)の調書の信用性もまた認め難いこと当然というべきである。
本件背広が被告人久保から被告人浪岡に対し贈与されたもの認むべきこと前記のとおりであるが、その贈与が原判示のような趣旨でなされたものと認めるに足りる証拠は他に全然存在しない。被告人久保が逮捕された後被告人浪岡が本件背広の上衣のテーラーマークを取り除き、野田と偽名を使つてこれをクリーニングに出した事実が証拠上認められるところであり、この事実が、被告人浪岡が本件背広を賄賂として被告人久保から供与されたものではないかと疑う一資料とならないこともないが、後記のように、被告人久保と私的に親交のあつた被告人浪岡が、被告人久保の逮捕、その取調の模様を聞き、公務員たる自分が業者である久保から本件背広を贈与された事実について犯罪の嫌疑を受けることをおそれ、不安と狼狽から右のような処置に出たものと認めるのが妥当であり、右の事実のみによつて本件背広の賄賂性を認定することは困難である。
むしろ原審証人久保笑子、同阪本光子の各証言、原審公判における被告人久保及び被告人浪岡の各供述、当審の証人岩本雛子、同浪岡千穂の各証言によれば、被告人浪岡は昭和三十年十二月ころ被告人久保と知り合つてから後しばしば久保方を訪れ私的に親交を重ねることに至り、翌三十一年四、五月ころには、被告人久保の妻笑子が同人の妹阪本光子と被告人浪岡との結婚を希望し、これを被告人久保に申し出で、同被告人もこれに同意して同年八月ころ両人をして見合をさせるまでの間柄になつたのであるが、その前同年六月ころ、被告人浪岡が被告人久保家を訪れた際、前記のようにたまたま洋服商伊東信英が同家に来合せたので、久保夫妻は右のような関係にあつた被告人浪岡の歓心を買うために前記背広を贈与したものと推測することができる。原判決は、縁談がまとまるか否か不明の時期に洋服を贈与することは不自然であるというけれども、被告人久保夫妻が被告人浪岡を妹の配偶者とすることを希望していたのであるから、たとえその縁談がまとまるか否か未だ不明の時期であつたにせよ、相手方たる被告人浪岡にその職務関係を離れて、物品を贈与することは少しも不自然ではなく、かような例は世上あり得ることであろう。
右の次第であるから原判決が被告人久保から被告人浪岡に対し、本件背広一着を職務に関し贈賄し、被告人浪岡がその情を知つて右背広を収受した事実(原判示第一の(三)の(イ)及び第三)を認定したのは経験則に反し証拠の採否を誤り事実を誤認したものであり、この誤認が判決に影響を及ぼすことは明白であるから、原判決はこの点において破棄を免れず、論旨はいずれも理由がある。
被告人浪岡の弁護人のその余の控訴趣意に対する判断は省略する。
山田被告人、吉田、松浦両弁護人の控訴趣意第一点及び吉田弁護人の控訴趣意第一点について
論旨の一は要するに、被告人山田は原判決の認定するような額の金員を被告人久保から贈与されたことはなく、また贈与を受けた金員も原判決認定のような趣旨で贈与されたものではない。且つ被告人山田に被告人久保のために原判決認定のような職務に関する特別な便宜取扱をしたことはないという趣旨である。しかし記録を調査すると、原判決挙示の各関係証拠により所論の事実はすべて原判示のとおり認めることができるから、原判決には何ら事実の誤認はない。
論旨の二の要旨は、被告人山田は昭和三十一年四月一日から通商班輸入係長の地位を離れたので自動車の無為替輸入承認申請の書類を審査する権限はなく、また自動車の無為替輸入の制度は昭和三十二年二月一日から廃止されたから、同日以後同被告人は無為替輸入に関する職務は担当していない、それ故原判決が別表13、14、15において昭和三十二年二月、三月、四月も同被告人が自動車の無為替輸入の職務に関し収賄したと認定しているのは事実の誤認であるという趣旨である。よつて関係証拠を調査すると、被告人山田は昭和三十一年四月一日以降は通商班輸入係長の兼務をやめ本務庶務係長のほか車体、ばね、資材の各係長を翌三十二年十二月ころまで兼務していたものであるが、昭和三十二年二月一日自動車の無為替輸入の制度が廃止されるまでは、庶務係長として同無為替輸入承認申請書類の受理、配布、無為替合議簿への記帳等の職務を担当していたのであるから、たとえ輸入係長として書類を審査する職務を担当しなくなつたとしても、自動車の右申請手続に関する事務はなお同被告人の担当職務範囲に属するものというべく、従つてその申請手続に関し、原判示のような取扱をし、これに対し金員の供与を受ければ収賄罪を構成すること明白である。また原判決が昭和三十二年二月以降の金員の受領も収賄罪を構成するものとしたのは、被告人久保の弁護人の控訴趣意書に対する判断中に説示したとおり、自動車の無為替輸入が廃止される以前被告人久保が被告人山田から受けた取扱に対する謝礼を、右制度廃止後に供与し、被告人山田がその情を知つてこれを収受したと認定したものと解せられるから、この点原判決には事実誤認又は法令適用を誤つた違法はない。
次に論旨の三は、原判決は被告人山田が被告人久保の通商産業省へ提出した自動車の無為替輸入承認申請書の全部について原判示のような便宜を与えた趣旨に認定しているのは誤認である、というのであるが、原判決を精読しても、原判決は被告人久保の提出した申請書類全部について便宜を与えたと認定したものとは解されないから、所論は当らない。
論旨はいずれも理由がない。
山田被告人、吉田、松浦両弁護人の控訴趣意第二点について
所論に鑑み記録を調査するに、昭和三十三年四月二十六日付被告人久保、同山田に対する起訴状添付別表(一三)には、昭和三十二年一月上旬喫茶店ボオルチにおいて金五万円の賄賂を授受した旨の記載があり、原判決別表(13)には同年二月上旬ころ金五万円の賄賂を授受した事実を認定していること所論のとおりである。しかし右は原判決が審判の請求を受けない事件につき判決をし、審判の請求を受けた事件について判決をしなかつたのではなく、原判決の認定事実は、金員授受の日時が異なるだけで、金額、場所及び授受の趣旨はいずれも公訴事実と同一であり、その日時も近接しているのであるから、原判決は右公訴事実と同一の事実につき判決をしたものと解すべきである。論旨は理由がない。
被告人久保の弁護人の控訴趣意第五点(量刑不当)、山田被告人、吉田、松浦両弁護人の控訴趣意第四点(量刑不当及び吉田弁護人の控訴趣意第二点(量刑不当)について
所論に鑑み記録を調査し、当審の事実審理の結果を併せて、被告人久保及び被告人山田の本件各犯行の情状を考えるに、被告人久保の私文書偽造、同行使の犯行は、ただ私利を追及するのあまり国の対外経済政策を紊す行為に加担したものであり、また被告人山田、同渡辺に対する贈賄の所為は、同じ動機から公務員の職を汚さしたものであつて、しかもその回数は多く、金額も多額である。これら犯行の動機、態様、罪質等の点から考慮すると、同被告人の罪責は決して軽しとはいえない。しかし同被告人は未だ前科はなく、従前の経歴、素行について特に社会的非難を受くべき点もなく、現在は堅実な貿易業を営んで居り、再犯のおそれはないと認められるから、同被告人に対しては実刑を科することをしばらく猶予し、その更生を期待するのが相当と思料される。また被告人山田の本件犯行はその動機において殆んど同情すべき余地なく、収賄の回数、金額共に多く、またその罪質も悪質である。従つて原判決が同被告人に対し実刑を科したのは理由あるところであるが、同被告人も未だ前科なく、二十余年間勤続した通商産業省も本件のために退職し、深く本件について反省改悟し、現在は民間会社において勤勉に働いて居ることが認められるので、家庭の状況その他所論の事情を併も斟酌するときは、同被告人に対しても刑の執行を猶予し、更生の途を与えるのが相当と思料される。それ故被告人久保及び被告人山田に対し実刑を科した原判決の量刑は重きに過ぎることに帰し、各論旨は理由があり、原判決はそれぞれこの点において破棄を免れない。
なお山田被告人及び吉田、松浦両弁護人らの控訴の趣意第三点、訴訟費用の負担に関する論旨については、前段説明のとおり、同被告人に関する原判決は破棄すべきものであるから、本論旨の判断を省略する。
被告人渡辺の弁護人の控訴趣意第一点について
所論の要旨は、被告人渡辺は被告人久保に対し、職務上原判示のような便宜の取扱をしたことはなく、また同被告人から供与された金額も原判示の額よりは少なく、金員授受の趣旨も原判決の認定は誤でというのである。併し記録を精査し原判決挙示の各関係証拠を検討すると、同被告人に関する原判示事実はすべてこれを認めることができるのであつて、原判決の右認定を左右するに足りる証拠は存在しない。それ故原判決には所論のような事実誤認の違法はなく、論旨は理由がない。
同弁護人の控訴の趣意第二点について
所論は原判決の量刑が不当に重過ぎるというのであるが、記録にあらわれている本件犯行の動機、態様、罪質並びに被告人の性行年令、経歴、家庭の事情等諸般の事情を総合勘案すると、原判決の同被告人に対する量刑は相当であつて、不当の重刑ということはできない。論旨は理由がない。
よつて本件各控訴のうち、被告人渡辺の控訴は理由がないから刑事訴訟法第三百九十六条によりこれを棄却し、その余の被告人の各控訴は理由があるから原判決中被告人久保に関する有罪の部分は同法第三百九十七条、第三百八十一条、第三百八十二条により、被告人浪岡に関する有罪の部分は同法第三百九十七条、第三百八十二条により、被告人山田に関する部分は同法第三百九十七条、第三百八十一条により、それぞれこれを破棄し、右被告人三名につき、当裁判所は同法第四百条但書に従い自ら次のように判決する。
一 被告人久保正雄について当裁判所が認定する罪となるべき事実は、
(中略)
また右事実を認定する証拠の標目は、
(中略)
法律の適用
被告人久保の右原判示第一の(一)うち右預金残高証明書偽造の点は刑法第百五十九条第三項、第六十条、罰金等臨時措置法第二条第三条に、右各私偽造文書行使の点は刑法第百六十一条第一項、第六十条、罰金等臨時措置法第二条、第三条に、右原判示第一の(二)及び(三)の(ロ)の贈賄の点は刑法第百九十八条、第百九十七条第一項前段、罰金等臨時措置法第二条、第三条に各該当するところ、右私文書偽造とその行使はそれぞれ互に手段結果の関係があるから、刑法第五十四条第一項後段、第十条によりいずれも重い偽造私文書行使罪の刑に従い、なお右偽造私文書行使罪と贈賄罪とはそれぞれ刑法第四十五条前段の併合罪であるから、各罪につき所定刑中懲役刑を選択したうえ、同法第四十七条、第十条により山田幸雄に対する原判決別表乙7号の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において被告人久保を懲役一年に処し、前記情状により同法第二十五条第一項を適用し、この裁判確定の日より四年間右刑の執行を猶予することとし、主文第四項記載の文書は前記私文書偽造の犯行により生じたもので何人の所有にも属さないから、同法第十九条第一項第三号第二項によりこれを没収することとし、刑事訴訟法第百八十一条第一項本文により主文第六項掲記のとおり原審及び当審の訴訟費用を同被告人に負担させることとする。
被告人久保に対する本件公訴中、同被告人が昭和三十一年六月ころ、東京都中央区銀座七丁目二番地東日モータース株式会社において、当時大蔵技官として東京税関鑑査部輸入鑑査第二課第二鑑査係長の職にあつた浪岡重一に対し、その職務に関し、賄賂として紺色トロピカル背広一着を供与して贈賄したとの事実は、これを確認し得べき証拠がないから、犯罪の証明がないものとして刑事訴訟法第三百三十六条により無罪の言渡をすべきものとする。
二、被告人浪岡重一に対する本件公訴は同被告人は大蔵技官として東京税関鑑査部輸入鑑査第二課第二鑑査係長に在職中、昭和三十一年六月ころ、東京都中央区銀座七丁目二番地東日モータース株式会社において、前記被告人久保正雄から、自己の職務に関し賄賂として供与されるものであることを知りながら、紺色トロピカル背広一着の供与を受け、もつて賄賂を収受したものである、というのであるが、右事実を確認するに足りる証拠がないから、犯罪の証明がないものとして同被告人に対し刑事訴訟法第三百三十六条により無罪の言渡をすべきものとする。
三、被告人山田幸雄について原判決が適法に認定した事実を法律に照すと、同被告人の各所為は刑法第百九十七条第一項前段に該当するところ、右は同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条、第十条により犯情の最も重い原判決別表7号の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役一年に処し、前記情状により同法第二十五条第一項を適用しこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予することとし、主文第五項掲記の物件は、同被告人が久保正雄から本件の賄賂として収受した物件であるから刑法第百九十七条ノ五前段によりこれを没収し、同被告人が久保幸雄より本件の賄賂として収受した現金合計五十五万円は、これを没収することができないから刑法第九十七条ノ五後段によりその価額を追徴することとする。
よつて主文のとおり判決する。
昭和三十七年八月七日
東京高等裁判所第十刑事部
裁判長判事 加 納 駿 平
判事 久 永 正 勝
判事 河 本 文 夫